JRAの獣医師として働くには?仕事内容や平均年収も紹介

Column

2023年5月22日

JRA(日本中央競馬会)は、獣医師の人気の就職先です。では、獣医師としてJRAで働くためには、どのようにすればよいのでしょうか。今回は、JRAの獣医師になる方法や仕事内容、平均年収などについてご説明します。

JRAの獣医師の仕事内容とは?

JRAの獣医職には臨床獣医職と研究職があります。また、レースがないときとレースが開催されるときで、業務内容が変わります。

平常時の仕事内容
レースが開催されていないときは、臨床獣医職の方は競走馬の病気や外傷の診療・治療にあたります。場合によっては、手術を行うこともあります。また、感染症などを予防するワクチン接種やJRAの厩に外部の牧場などから馬が入る際の検疫業務も担当します。研究職は、競走馬全般に関わる調査や研究業務を行います。

レース開催時の仕事内容
レース開催時には、開催業務として出走馬の状態を検査する馬体検査を行います。また、レース中に事故が発生した場合には、事故にあった馬の救護や治療などを担当します。



JRAの獣医師になるにはどうすればよい?

JRAの獣医師として働くための流れをご紹介します。

獣医学部のある大学に進学する
獣医師としてJRAで働くためには、まずは、獣医師の資格を取得しなければなりません。獣医師は国家資格であり、獣医師の国家試験の受験資格は、大学で獣医学過程を修めて卒業した人、または卒業見込みの人です。そのため、JRAの獣医師を目指すのであれば、獣医学部や獣医学科などが設置されている大学に入学をし、大学で6年間、獣医学について学ぶこととなります。

獣医師の国家試験に合格する
JRAの採用試験に合格しても、獣医師国家試験に合格できなければ獣医師として働くことができません。毎年2月に行われる獣医師国家試験を受験し、合格すると大学卒業後にJRAの獣医師として勤務できるようになります。

JRAの採用試験を受け、合格する
大学の6年次にJRAの採用試験を受けます。これまでのJRAの獣医職の選考方法は、書類選考、筆記試験(一般常識)、一次面接・筆記試験(専門・英語)、最終面接という流れで行われています。

JRAの獣医師の倍率はどれくらい?

JRAの獣医職は非常に人気の高い就職先であるものの、採用人数が少ないために、倍率はかなり高いと言われています。しかしながら、応募人数が公表されていないため、具体的な倍率は分かりません。
JRAが公表しているデータによると、直近5年の採用実績は2019年度が6人であり、それ以外の年は5人です。採用人数がかなり少ないことからJRAで獣医師として働くためには、かなり狭き門を突破しなければならないことが分かるでしょう。

JRAの獣医師の年収について

「日本中央競馬会の役職員の報酬・給与等について」によるとJRAに勤務する獣医師の令和3年度の年間平均給与額は、10,792,000円(平均年齢42.2歳)となっています。獣医師に限った場合ではありませんが、JRA職員の平均年収は、おおよそ次のようになると考えられます。

年齢別の平均年収

男女別の平均年収

役職別の平均年収



JRA以外の獣医師として働く道もある

JRAでの勤務のほかに、競走馬に関わる獣医師として働く方法があります。それは、NAR(地方競馬全国協会)の獣医師として勤務する方法です。

NAR(地方競馬全国協会)の仕事内容や年収など
NARとは、競馬法に基づき、全国12の都道府県にある17か所の競馬場で開催されている地方競馬をサポートし、地方競馬の健全な発展と畜産の進行を図ることを目的として設立された団体です。NARでも、JRA同様に獣医職を募集しています。
NARに勤務する獣医師は、獣医師として馬の診療にあたるほか、薬物関連業務や裁決・決済審判・発走などの開催業務にも携わることもあり、様々な業務に関わることとなります。
2022年4月の獣医学科卒(本部勤務者)の初任給は月額254,880円、獣医学科卒(センター勤務)の初任給は220,896円となっています。賞与を4.5か月と仮定すると初年度の年収は約400万円~420万円程度になるでしょう。JRAの獣医職の初任給も同程度であることから、NARの獣医師の場合もJRAと同等の年収を期待できるでしょう。
また、NARの場合も獣医職の募集は決して多くはありません。直近5年間の採用人数を見ると、2023年は1名の採用予定ですが、2022年には採用がなく、2021年に1名、2020年に2名の採用実績があるのみです。JRA同様に、NARの獣医師として働く道も非常に狭き門であると言えるでしょう。

まとめ

JRAの獣医師として働くには獣医学部のある大学に入学し、6年間、獣医学を学んだ後にJRAの採用試験を受ける必要があります。また、採用試験合格後も獣医師国家試験を受験し、合格しなければ獣医職としては働けません。
馬に関わる業務を希望する獣医師は多く、JRAは年収も高いことから人気の就職先となっています。募集人数も少ないため、非常に競争が激しくなりますが、毎年数名の方が獣医師として採用されています。競走馬に関わる仕事を希望するのであれば、狭き門ではありますが、獣医学部に入学し、獣医師免許の取得とJRAへの就職を目指してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

高野 航平

大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。