水産獣医師の仕事内容とは?海の生態系を守る専門職

Column

2024年8月15日

水産獣医師という職業をご存じでしょうか?近年、養殖業の発展とともに注目されているこの職業は、海洋生態系の健康を維持し、養殖魚の病気を予防・治療する重要な役割を担っています。今回は、水産獣医師の仕事内容、なるための道筋、そしてその魅力について詳しく解説します。

水産獣医師の仕事内容


1.養殖魚の健康管理と治療
水産獣医師の主な仕事は、養殖魚の健康管理と治療です。魚病の原因を突き止め、適切な治療法を提供することが求められます。養殖魚の病気は主にウイルス、細菌、寄生虫によって引き起こされます。水産獣医師は以下のようなプロセスで診療を行います。

・検体の検査
養殖事業者から送られてきた死魚や病魚の検体を目視や顕微鏡で調べ、寄生虫や細菌、ウイルスの有無を確認します。これにより、 細菌培養やウイルスのPCR検査を行い、病気の特定を行います。

・現地診察
必要に応じて養殖場に赴き、魚の泳ぎ方や餌の摂取状況、体色の変化などを観察し、総合的に健康状態をチェックします。

・治療方針の決定
病気の特定後、投薬を含めた治療方法をアドバイスします。治療薬の選定にあたっては、副作用の有無や薬の残留期間などの安全性も考慮します。

2.魚病予防と健康管理
産獣医師は、病気の予防にも力を入れています。定期的な健康チェックや予防接種、飼育環境の改善などを通じて、魚の健康を維持します。また、養殖魚の飼料の栄養バランスを整え、病気に強い魚を育てることも重要な役割です。

3.調査・研究活動
養殖業の発展には、継続的な調査と研究が欠かせません。水産獣医師は、新しい治療法や予防策の研究に取り組み、成果を業界に還元します。例えば、ブリの「べこ病」の特効薬開発などが挙げられます。

水産獣医師になるには?

1.獣医学科の大学を卒業
まず6年制の獣医学科を卒業し、獣医師国家試験に合格することが必要です。

2.水産獣医師としてのキャリアを積む
大学卒業後、水産獣医師としてのキャリアを積むためには、水族館や養殖場などでの実習が有効です。特に、水産関連の研究室や企業での経験や、水産業界でのネットワーク作りが重要です。

3.専門資格の取得
水産獣医師として働く際には、潜水士資格やスキューバダイビングのライセンスなどの資格が役立つ場合があります。これらの資格は必須ではありませんが、持っていると就職活動で有利になることがあります。

水産獣医師の給料と年収

水産獣医師の年収は、約500万円程度と一般的な獣医師よりも低くなる場合があります。これは、獣医師としての専門業務以外にも多くの業務を担当するためです。具体的には、飼育員と兼務することが多く、専業の獣医師に比べて給与が低くなる傾向があるためです。しかし、勤務年数や能力によって変動しますので着実にキャリアを積み上げていくことが重要です。

水産獣医師の魅力と今後の展望

1.養殖業の発展を支える
養殖業は、持続可能な食料供給や価格安定、環境保護の観点から重要視されています。水産獣医師は、この成長産業を支える重要な役割を担っています。

2.調査・研究のやりがい
水産獣医師は、まだ解明されていない魚病の研究や、新しい治療法の開発など、常に新しい発見が期待される分野です。これにより、多くの養殖業者を支援し、業界全体の発展に寄与することができます。

3.オンライン診療の普及
近年では、病気の魚の写真や動画を用いたオンライン診療も普及しています。これにより、診療の効率化や遠隔地の養殖場の支援が可能となり、水産獣医師の活動範囲が広がっています。



まとめ

水産獣医師は、海の生態系と養殖業を守る重要な専門職です。将来の水産業の発展に貢献できるやりがいのある仕事ですので、ぜひチャレンジしてみてください。
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この記事の監修者

高野 航平

大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。