獣医師に将来性はある?現在の需要から推測
Column
2023年10月3日

獣医師は、動物好きな方にとって憧れの職業であります。しかし、中には獣医師は将来性のある仕事なのか、不安に感じる方もいらっしゃるようです。
そこで今回は、現在の需要から考えられる獣医師という職種の将来性について、分かりやすく解説していきます。
現在の獣医師の需要について
獣医師の将来性を推測するために、まずは現在の獣医師を取り巻く状況についてご説明しましょう。
公務員獣医師・産業動物獣医師は不足
農林水産省の調査によると、獣医師としての届け出をしている人は4万人を超え、そのうち約3.6万人が獣医事に従事しているとされています。獣医師の数自体は少しずつ増えており、多くの獣医師は小動物を対象とした動物病院に勤務をしています。一方で獣医師が不足している分野もあります。それが家畜などの産業動物の疾病予防や診療などを行う公務員獣医師と産業動物獣医師です。
ペット関連の需要は増加
新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、外出を自粛し、お家で過ごす時間が増えたことから、2020年あたりからペットを飼う人が増加しました。飼育されるペットの増加に伴い、ペットフードやペット用品などの市場規模も拡大しています。ペットの飼育頭数が増加することで、動物の健康を支える獣医師のニーズも高まっていると考えられます。
動物病院の種類も増加している
かつては、屋外で飼われていた犬や猫なども、現在は室内で人と一緒に暮らすことが多くなっています。コンパニオンアニマルという言葉も登場したように、ペットは今や家族の一員となっているのです。それに伴い、動物病院にも高度な診断や医療の提供が求められるようになり、二次救急を専門とする動物病院も増えています。また、ペットの種類も多様化していることからエキゾチックアニマルを専門とする動物病院なども登場し、飼い主様の需要に合わせて動物病院のバリエーションも豊富になっています。
獣医師の将来性は?
ペット関連の需要が高まっていることや獣医師の主な勤務先である動物病院も多様化していることをご紹介してきました。では、これらのことから獣医師という仕事の将来性はどのように推測できるのでしょうか。
需要がゼロになることはない
まず、コロナ禍でペット関連の需要が高まったことから、今後、急激に動物病院の需要が低下することは考えにくくなります。また、ペットを家族のように考える人が増えていることから、病気の予防や健康維持のために動物病院での健康診断や予防接種を希望する人、病気の際に高度な医療を希望する人も増えるでしょう。
加えて獣医師が活躍できるフィールドは幅広く、動物園や水族館、競馬場などでも獣医師が活躍しているほか、ペットフードや医薬品メーカー、ペット向け保険会社など、民間企業でも需要があります。また、産業動物獣医師、公務員獣医師は慢性的な獣医師不足に悩まされており、将来的にも獣医師の需要がゼロになる心配はありません。
働き方は多様化する
高度な動物医療を提供する動物病院や夜間の救急対応を行っている動物病院なども増えていることから、獣医師の働き方も多様化すると考えられます。また、飼い主様や動物の高齢化が進めば往診や在宅診療のニーズも高まるでしょう。
さらに、動物病院に所属して診療をするのではなく、フリーランスとして自由な働き方をしている獣医師やダブルワークをしている獣医師も増えています。働き方の多様化に伴い、獣医師の新たな可能性もますます広がっていくと考えられます。
労働環境の見直しへの期待
20代、30代では獣医師の約半数が女性です。しかし、年代が上がるごとに女性獣医師が占める割合は低下しています。動物病院はスタッフの数が少ないことから、育児休暇を取得しにくく、獣医師としての仕事に満足していてもなかなか長く働き続けられないという現状があります。また、診療時間の終了間際に急患が入ったり、緊急の手術が入ったりすることもあるため、同じ時間に仕事を終えられないことも少なくありません。仕事に復帰しても、保育園のお迎え時間に間に合わなくなってしまうことが多くなれば、育児と仕事の両立ができず、離職せざるを得ないこともあります。
しかし、社会全体でワークライフバランスの見直しが進められている今、長時間労働が日常化している獣医師の労働環境も見直され、働きやすい環境づくりが進められています。労働環境が整えば、結婚や出産によりライフステージが変化しても、獣医師として継続して働き続けられるようになるでしょう。
まとめ
獣医師は、動物病院での就業のほか、動物園や水族館、ペット関連企業、公務員など、さまざまな分野でニーズがあります。現在、ペットを飼育する人が増えていること、ペットを家族として捉える傾向が強まっていることからも、大切なペットの健康を守る動物病院のニーズは今後も続いていくと考えられます。また、獣医師の労働環境の見直しも進められており、今後は家事や育児と両立しながら獣医師として働ける環境も増えていくと期待できます。
これらのことから、専門性の高い分野である獣医師という職種の需要がなくなることはなく、多様な働き方もできるようになることから、獣医師は将来性が十分にある職種だといえるでしょう。
この記事の監修者

大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。